代官山の駆け込み寺「代官山はり指圧 太極堂」

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恵比寿と渋谷に挟まれた賑やかなエリアでありながら、ゆったりとした時間の流れるセンスの良い街並みが魅力の代官山。そんな代官山に、この地で生まれ育ち、鍼灸指圧院を営む“代官山の名医”がいるのを、みなさんご存知ですか?

今回は口コミだけで40年以上続く代官山の駆け込み寺「代官山はり指圧 太極堂」の院長、永井峰助さんにお話を聞いてきました。

八幡通りから曲がってすぐの太極堂。左手には代官山フォレストゲートが見えます

「1950年に代官山で生まれ、この場所で幼少期を過ごしました。その頃はもちろん周りも民家ばかりでしたよ。今のBEAMSのあたりに公園があり、その隣には空襲で焼けた建物の瓦礫がまだ残っていて、そこで友だちと遊んだのを覚えています。八幡通りにはひととおりの商店があって、うちはこの場所の一階で母がパーマ屋を営んでいました。」

永井さんの話す“この場所”とは、代官山のメイン通りである八幡通りから曲がってすぐの一等地の一軒家。戦後すぐに建てられたご自宅は、永井さんが中学生くらいの時に建て変えられたそう。代官山の中ではかなり昭和を感じる建物です。

「小学校は猿楽小学校に通っていて、友達も多く住んでいました。私が20歳くらいまでは民家もありましたが、今はすっかり変わりましたね。今思えば、駅前にあった代官山東急アパートメントがなくなって、ヒルサイドテラスが完成した1970年から街はガラリと変わったようです。」

引き寄せられるように、この世界へ

大学に進学し、将来について考えていた永井さん。しかし、いつの間にか引き寄せられるように鍼灸や指圧の世界にのめり込んでいったそうです。

代官山で生まれ育った永井峰助さん。なんと今年で73歳です

「最初は母が通っていた指圧治療院に出入りするようになって、見よう見真似で手が動いていました。今思えば、美容師として働き日々疲れていた母の背中を見て育ち、なんとかなるのではという気持ちでこの道に魅せられたのかもしれませんね。」

お母様が通われていた麻布の永平寺東京別院の安部常正師匠に随行して渡仏。フランスで世界を見て、そして鍼灸の深さを知り、この道に進むことを決意したそうです。帰国してすぐに「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」の免許を取得し、7年間の整形外科病院勤務の後、この場所に「太極堂」を開業しました。その当時この辺りに治療院はまだありませんでした。

味わいのある施術室は落ち着いた雰囲気です

そこからは基本に忠実に丁寧な施術をすることで、多くの人の駆け込み寺として長く続けてきました。長年の経験で、ツボに触れて、指先の感覚から、その人の体質のタイプを感じ取ることができるそうです。

「鍼は痛みのシェアだと思っています。みんな不調があってここに来る、辛い気持ちをわかって欲しいはずです。体が語っているそれを見つけ出して『これだったのですね!』と共感すること、100発100中とはいきませんが問題のツボをシェアすること、それがやりがいですね。」

太極堂には、二世代に渡り来院される方、10年ぶりにフラリと寄ってくださる方、もちろん近隣のお客様もいらっしゃるそう。この日も、お忙しい予約の合間にお時間を作ってくださいました。

行儀が良くて穏やかな街、代官山

最後は代官山で生まれ育った永井さんに、代官山についてお話をお伺いしました。これだけ長く代官山に住んだ人にお話を聞く機会はなかなか貴重です。永井さんのご希望で、太極堂さんのお隣にあるQueen’s Collection Chocolate Cafe Daikanyama(クイーンズコレクション チョコレートカフェ代官山)さんにて、美味しいコーヒーをいただきながらお話の続きが始まりました。

「代官山は空気が爽やかで、今でも緑が残る綺麗な街。日本でも独特な場所じゃないかなぁと。だからこそ、再開発で街のすべてが変わっていくのは嫌だなぁと思います。街ごと引っ越したみたいになってしまう。すべてをビジネスが成り立つか成り立たないか、採算が合うか合わないかで考えて作られる街にはなって欲しくないです。もちろん変化も必要なのはわかっているので、新しい人たちが頑張ってくれるのも頼もしいです。」

取材陣はチョコレートドリンクをいただきましたが、とても美味しかったです!!

「この街の人々は穏やかです。こちらのカフェはうちのテナントですが、私は毎日コーヒーを美味しく入れていただいています。ここでiPadやiPhoneのレクチャーを受けながら楽しんでいます。そんな代官山が私は好きです。」

そう話す永井さん。その言葉からは、これからの代官山への期待感がありました。さすが70年以上この街を見てきて、この街の人と関わってきた重みを感じます。

そして、インタビュー中もカフェで街の人たちと話す際に見せてくださった永井さんの笑顔からは、新たな代官山を担う人たちとの絆がしっかりと見受けられました。

その絆は、代官山の未来が明るいことを示しているようでした。

代官山の同業者様との1枚
代官山の同業者様との1枚
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