おしゃれなセレクトショップやカフェが軒を連ね、散歩するだけでも楽しい街、代官山。そんな代官山駅、すぐの人気複合施設「代官山アドレス」に、20年以上続く革製品のお店「Diral」があります。外観からもセンスを感じるおしゃれなお店です。
今回は代官山の人気店「Diral」のオーナー、岩永大さんにお話を聞いてきました。
「大学を卒業後、姉のいるイギリスへ語学留学に1年間行き、そこからイタリアにも一年半くらい住んでいました。イタリアでは何をするわけでもなかったんですが、仲が良くなった洋服屋さんの買い付けについて行って自分の洋服を買っているうちに、“これ日本でも売れるなぁ”と思い、日本で古着屋をスタートしました。」
「当時は90年代のデニムブームもあり、リーバイスなんかがすごく売れてね。渋谷の東二丁目に『D』という店を出したら雑誌にも取り上げられて、イタリアに年に3、4回買い付けに行く生活が3年くらい続いていました。」
「考えないことが上手くいったりする」
じつはアパレルからのスタートだったという意外な事実で始まったインタビュー。お話を聞くと、この頃から岩永さんのセンスが良かったことが感じられます。では、代官山への移転や、革製品にシフトするきっかけはなんだったのでしょうか?
「アパレルの流行を追い続けるのにも疲れてきたところで、革加工を扱ってる友人がいたのでなんとなく革製品を始めました。当時は彼女だった妻に“オーダーのトートバッグが欲しい”と言われて作った鞄がテレビでも紹介されるほど売れて、徐々に革製品が中心になっていきましたね。その後、先輩に一緒にやらないかと誘われて2001年に代官山の八幡通り沿いの路面店へ移り『Diral』という店名に変わりました。」
先輩との共同経営を経て、その後、事業を買い取り、代官山アドレスへと移ってきた『Diral』。そのこだわりやセンスの良さが評判となり、今では地方から買いに来る人もいる人気店になりました。その“こだわり”や“商売”の秘訣を聞いてみると意外な答えが返ってきました。
「こだわりなんかなくて、いつも流れに身を任せてるだけ(笑)。考えてやっていることは上手くいかなくて、考えないことが上手くいったりするんだよね。最初は洋服だったけれど、特別洋服や流行に詳しかったわけでもありませんし、いつの間にか革になっていましたね。」
こだわりがないと言いつつも、特別なセンスを感じる岩永さん。柔軟性もあり、時代とともに扱う物も変化していきます。
「それこそ最初の頃、革の財布や鞄を売って、それを何年も大切に使ってくれている人を見て嬉しかったんです。でも、毎日コーヒーショップで700円のコーヒーを買ってる自分を客観的にみて…人はコーヒーには年間これだけ使っているのに、革製品だと一つ買って満足させてしまう。これは商売としてはどうなんだろう?って気がついたんですよね。」
「まずはオリジナルで名前入れをしてみようと始めたんだけど、外注すると思った色や字体が表現できなくて……思い通りにしたくて試行錯誤しながら、アメリカのヴィンテージの書体スタンプなんかを仕入れて自分で始めました。あと、5年前に犬を飼い始めて、ワンタグ(迷子札)を作ったのもまた転機でした。愛犬用はもちろん、ギフトとしてたくさん頼んでくれるお客さんも増え、地方から作りに来てくれるお客さんもいます。そうやって商売が伸びていくのを感じて、今はうちだからできること、大手にできないことをやらなきゃいけないって思っています。」
背伸びしても遊びにきたい街、代官山
今も昔も変わらない人気を誇る代官山。学生時代から代官山に通っていた岩永さんに代官山について聞いてみました。
「代官山って唯一無二というか、昔から本当におしゃれな街。学生の頃は輸入雑貨屋の『DETENTE』や飲食店の『TOM’S SANDWICH』とかイケているお店が多くて、背伸びして遊びに来る街でしたね。だからお店を持つなら代官山以外は考えなかったなぁ。今も他の場所は考えていません。代官山が職場って出勤が憂鬱な気持ちにならないんだよね、俺は(笑)。」
そう代官山の魅力を語ってくれた岩永さん。今までインタビューした方々もそうでしたが、代官山は人の心を掴んで離さないようです。
そんな岩永さんにこれからの代官山について聞いてみました。
「もっと街が盛り上がって欲しいと思います。スペースもたくさんあるんだから、イベントとかやって欲しいですよね。個人的には“犬の街”としてもっと盛り上げていって欲しいなぁ。ドッグランとか作って欲しいですね。」
代官山らしいゆるっとしたセンスの良さを感じる雰囲気をまとった岩永さん。代官山は住む人、働く人の雰囲気で作られていくのを感じます。
洗練されながら構築されていく街、代官山。「背伸びしてもきたい街」は、この先も多くの人の心を握って離さない街でもあると感じるインタビューでした。